ゲーム実況者キヨと視聴者A

数年前の春、ある日を境に眠れなくなった。

大好きなはずの映画は5分も経たず観れなくなり、もちろんアニメも見れず、本は読もうとしても文字が浮き、電車などの公共交通機関に乗る時は心臓がばくばくしてしまい乗れなくなった。

パニック障害と鬱病。

淡々とお医者様から告げられた。

「おうちでゆっくり休んでくださいね」と言われたものの、どう休むのかもわからず、むしろ休んでることへの罪悪感が募り、毎日泣いていた。

この頃幸いなことに近くに住んでる友人がいたので、助けてもらうこともあった。

でも、「どうしようもない」日は高頻度でやってくる。

ぐるぐる思考は回り、考えても仕方のないことばかりが不安にさせ、眠剤で眠気をと思っても効かない日が続いていた。

ある時、ずっと開いていなかったYouTubeならもしかしたら気を紛らわせるかもしれないと思い、開いたことがあった。

たくさんのサムネ、文字の羅列、情報の多さは思っていた以上にしんどく、閉じようとしたとき、ふと目に入った動画があった。

それは高校時代から好きなゲーム実況者キヨのリトルナイトメアの実況動画だった。

もう藁にもすがる思いで、とりあえず見てみてダメだったら他のことでもしようと思いたち、動画をスタートさせると、いつのまにかカーテンの隙間から光が漏れ、心臓のばくばくもおさまっていた。

本当に不思議で仕方なかった。

いままで、5分以上見れなくなっていた映像が見れたことも、何もしてもおさまらなかったばくばくが止まって落ち着けたことも本当に不思議だった。

というのも、キヨはとても声が通るし、よく喋るし、何より急に高めの声を出したりするタイプの実況者で(これだけ言うと変な人だと思われるかもしれないのですが、本当に変な人です)、「＝落ち着く」に結びつけるには難しい実況をする人だったから。

でも、その日以来、心臓がばくばくしたとき、眠れなくて不安になったとき、キヨの実況を見て、気を紛らわしたりするようになった。

眠れるようになったとかそんなことはなかった。

だけど、確実にキヨの声を聞くと安心できたし、何よりこの当時何度も生を手放したいと泣いていたわたしに生きる楽しみをくれた。(この時期は逆転裁判の実況をしていたので、それが日々の楽しみだった)

特別何かキヨに言ってもらったわけでも、してもらったわけでもない。

キヨはゲーム実況者で、わたしは視聴者の1人のまま。

わたしはキヨのことを動画以外からはほぼ知り得ないし、キヨもわたしを知り得ない。

でも、わたしはキヨにたくさん息をさせてもらった。

こんなこと言ったらキヨは笑うんだろうけど、こんな時くらいは言わせてください。

実況しててくれて本当にありがとう。

視聴者のこともたまにだけど気にかけてくれてありがとう。

言葉を選んだり、キヨがみんなを傷つけないようにアップデートをしようとしてるのもなんとなくだけど、伝わってます。

キヨの人生はキヨのもので、わたしにキヨの活動にわたし自身の祈りをのせるなんてすごく最悪なことなのかもしれないけど、わたしは意地でもこれから先も「キヨ」って呼び続けるから、キヨもわたしたち視聴者のことを「おまえら」って呼び続けてくれ！(と願いながらも、やっぱり休んだり、キヨの好きなようにしててほしい)と思ったりしてるよ

14周年おめでとう。