「向井太一」と「ぼく」

オタクというのはとてもややこしい生き物だと思う。

その対象を知った気で話すし、知った気で彼らが発したものを解釈する。それも自分の都合がいいように。

これはぼくも例外ではない。

ぼくは昔から生粋のオタク気質で何かを好きになると長くそれを愛し、大切にしたいと思う。

17歳だっただろうか、18歳だっただろうか、その頃のぼくはあまりにやわでフラフラしていた。

「ぼく」は当時「他の人とは違うかも」という感覚をなんとか「普通」にするために荒療治でいろんな人と恋愛(もどき)をしてみたり、社会的に求められる格好をしたり、とにかく心と体のピースが全く合っていなかった。(この話はまたゆっくりどこかで)

でも、人間というのは不思議で、そういう時に限って、心を許せたらと思う相手に出会ったりする。

ぼくもそのうちの一人だった。

今思えば、相手にはあまり大切にされていなかったし、ぼくも自分を大切にできてなかったし、ご縁が続かなかったことは当たり前で、それで良かったと思えるけど、その時はその縁がうまく続けられなかった時、ボロボロになった。

そういう時、自分の中に何かを求めるよりも外に何かを求めた方が楽になるのはぼくのよくないところなのかもしれないと思いながら、とにかく音楽を聴き漁った。

昔から、辛いことがあると音楽をひたすら聴いて保とうとするところがあった。

サウンドクラウド で周りの誰も知らなそうなアーティストを見つけるのが好きで(今でもその癖があるけどちょっと良くないと思ってる(笑))、いつも通りサウンドクラウド の海でぽしゃぽしゃとしていた時、それから先の人生を彩ってくれた人に出会った。

初めから「すき！」となったというより聴き流しているうちに、じわじわとぼくの身体のなかに入ってくる感じだった。

それから、なんとなく生活に入ってくるようになったそのアーティストの音楽はいつのまにか当時悶々としていたことを考えなくても大丈夫にさせてくれた。

自分が自分でいても大丈夫だと少しずつ思えるようになるまで、何度もその人のライブに行くようになった。

その人の考えてることが好きで、

その人の言葉の使い方が好きで、

その人の周りの人とのやり取りが好きで、

その人の作りたいと思うものが好きで、

8年目になった。

規模のミニマムなライブハウスでしていたその人はいつのまにかたくさんの人たちが入るステージに立つことが多くなった。

名前を言えば「知ってる！」と言われることが増えた。

勝手ながら、ぼくはそれがすごく嬉しかった。

その人がしたいこと、伝えたいことで、名前が知られていることが。

数日前、その人が新しいフェーズに入ることになった。

それはすごく前向きなものだった。

「向井太一」さんを知ることができた、見続けることができたこの7年間。

ぼくの痛みとか嬉しさとか些細なことも常に共にあった。

「向井太一」さんからしたら、ぼくはただのファンでしかない。

でも、ぼくの人生にとってはかけがえのない、大きな存在。本当にそれってすごいことだと思う。

新しいフェーズ、共にではないけど、扉を開く瞬間を見れたこと心から嬉しい。

ファンの戯言、として、

ここに残していく。